ナナオの「ColorEdge CG243W」は、色再現性にとことんこだわったカラーマネジメント対応の24.1型ワイド液晶ディスプレイだ。DisplayPort入力による10ビット表示、Adobe RGBカバー率98%のIPSパネル、温度センシング機能、動画市場向け技術など、さまざまな新機能や仕様強化が見られる。果たして、その実力は本物なのか? 前モデルの「ColorEdge CG242W」や弟分の「FlexScan SX2462W」とじっくり比較した。
ナナオは液晶ディスプレイの代表的なブランドとして、「FlexScan」と「ColorEdge」を擁する。前者は幅広いユーザー層をカバーする一般向け、後者は色を扱うプロフェッショナルからハイアマチュアに向けたシリーズである。両者の違いを決定付けるのは、色再現性能にほかならない。
念のために断っておくと、FlexScanシリーズも一般向けの製品としては相当な高品位である。オフィス利用に最適な数々の疲れ目対策機能はもちろん、上位機種のFlexScan SXシリーズに至っては、ColorEdgeシリーズと同等のデジタルユニフォミティ補正回路や16ビット内部演算/12ビットLUT(ルックアップテーブル)といった高画質技術を備え、出荷前に輝度と色度の測定作業および補正作業まで行っている。これほど表示品質に注力した汎用のPC向け液晶ディスプレイは、ほかには存在しないだろう。
しかし、主にコンテンツデータの利用者向けとなるFlexScanと、コンテンツデータ自体の作成環境に用いられるColorEdgeでは、求められる機能や表示性能が大きく異なる。コンテンツデータの作成に必要な高いレベルの表示性能という需要に応えるため、ColorEdgeには高度なハードウェアキャリブレーション機能や多数の画質補正回路、FlexScan以上に入念な出荷前チェックが行われているのだ。
ColorEdgeシリーズといえば、2009年の年初に「ColorEdge CG242W」が登場したばかりだが、早くもその後継モデル「ColorEdge CG243W」が8月5日に発売された。わずか半年程度でのモデルチェンジだけに、マイナーアップかと思いきや、さにあらず。大幅に仕様を強化しての登場である。何しろ、液晶パネルから接続インタフェース、ユーザーインタフェース、映像プロセッサに至るまで、CG242Wから変更している。見た目こそ従来機と変わらないが、中身は完全に別物といっていい。
それでは、以下に前モデルのColorEdge CG242Wや、CG243Wと同等の高画質化機能を多数盛り込んだFlexScan SXシリーズの最新モデル「FlexScan SX2462W」との比較も交えながら、CG243Wの実力に迫っていこう。3製品の主な仕様は下表に示したので、参考にしてほしい。
ColorEdge CG243W、ColorEdge CG242W、FlexScan SX2462Wの主なスペック | ||||
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モデル名 | ColorEdge CG243W | ColorEdge CG242W | FlexScan SX2462W | |
液晶パネル | 24.1型ワイド(IPS) | 24.1型ワイド(VA) | 24.1型ワイド(IPS) | |
最大発色数 | DisplayPort:約10億7374万色/10ビット対応(約680億色中/12ビットLUT)、DVI:約1677万色/8ビット対応(約680億色中/12ビットLUT) | 約1677万色/8ビット対応(約680億色中/12ビットLUT) | DisplayPort:約10億7374万色/10ビット対応(約680億色中/12ビットLUT)、DVI:約1677万色/8ビット対応(約680億色中/12ビットLUT) | |
色域 | Adobe RGBカバー率98%、NTSC比102% | Adobe RGBカバー率97%、NTSC比102% | Adobe RGBカバー率98%、NTSC比102% | |
画面解像度/表示面積 | 1920×1200ドット/518.4×324.0ミリ(ドットピッチ0.270×0.270ミリ) | |||
輝度 | 270カンデラ/平方メートル | 270カンデラ/平方メートル | 270カンデラ/平方メートル | |
コントラスト比 | 850:1 | 1100:1 | 850:1 | |
視野角 | 上下178度/左右178度(低色度変位) | 上下178度/左右178度 | 上下178度/左右178度(低色度変位) | |
応答速度:黒→白→黒)/中間階調 | 13ms/5ms(オーバードライブ) | 12ms/6ms(オーバードライブ) | 13ms/5ms(オーバードライブ) | |
映像入力 | DisplayPort×1(HDCP対応)、DVI-I×2(HDCP) | DisplayPort×1(HDCP対応)、DVI-I×1(HDCP) | DisplayPort×1(HDCP対応)、DVI-I×2(HDCP) | |
USB | USB 2.0ダウンストリーム×2、USB 1.0アップストリーム×1 | |||
外形寸法(幅×奥行き×高さ)/重量 | 566×230×456〜538ミリ/約10.7キロ(スタンド含む) | |||
スタンド(昇降/チルト/スイベル調整) | ハイトアジャスタブルタイプ(約82ミリ/上40度/左35度、右35度) | |||
縦回転 | 右回り90度 | |||
カラーモード | sRGB、Custom、EBU、Rec709、SMPTE-C、DCI、Calibration(CAL) | sRGB、Custom、Calibration(CAL)、Emulation(EMU) | Text、Picture、Movie、sRGB、User1、User2、User3 | |
3D-LUT | 搭載 | − | ||
デジタルユニフォミティ補正回路 | 搭載(実環境の輝度で調整。中間階調重視) | 搭載(最大輝度で調整。白色重視) | ||
調光機能(輝度ドリフト補正、輝度自動制御) | 搭載 | |||
温度センシング機能 | 搭載 | − | 搭載 | |
拡大モード(画面サイズ) | フルスクリーン/拡大/ノーマル | |||
ColorNavigator(ハードキャリブレーション) | 標準添付 | − | ||
EIZO EasyPIX(簡易カラーマッチング) | オプション(ColorNavigator推奨) | オプション | ||
UniColor Pro(色覚シミュレーション) | 対応 | |||
EIZO ScreenSlicer(画面分割) | 対応 | |||
遮光フード | 付属 | − | ||
保証期間 | 5年間 | |||
標準価格 | オープン | |||
EIZOダイレクト価格(発売時) | 18万8790円(税込み) | 18万8790円(税込み) | 10万4800円(税込み) | |
まずは液晶パネルだが、CG243Wには久しぶりにIPS方式のパネルが採用された。ColorEdgeの上位機種といえば、かつてはIPS方式のパネルを搭載した名機が名を連ねていたが、昨今は価格を抑えつつ、十分な表示品質も確保できるとあって、VA方式のパネルが主流になっている。一般にIPS方式のパネルは高コストになりがちだが、CG243Wでは新型のパネルを採用することで、VA方式のCG242Wと変わらない価格を実現してきた。
液晶パネルの選定について、ナナオは「現状で品質のよいパネルを選んだ結果であり、IPSにこだわったわけではない」とのことだが、大型のワイド液晶パネル、殊にColorEdgeのような高品位ディスプレイにおいては、IPS方式の広視野角特性だけでも有用だ。
液晶ディスプレイに詳しいユーザーには常識だが、カタログスペックの「視野角」は、コントラストの低下だけを基準にしたものであり、画面を見る角度によって色が変わること(色度変位)は考慮されていない。そのため、TN方式やVA方式の液晶ディスプレイでもカタログ上は視野角が広い製品がほとんどだ。しかし実物を見ると、画面を見る角度が正面から少しずれただけで色かぶりが発生する製品も少なくない。これでは色再現性を重視する用途には使えないだろう。
幸いナナオが積極的に採用しているVA方式のパネルは、視野角による色度変異が比較的少ないタイプで、前モデルのCG242Wであっても通常の利用において視野角が狭いと感じることはまずない。それでも厳密に見ていけば、IPSパネルを搭載したCG243Wの視野角特性のほうが優れている。かなり角度を付けて見ると、CG242Wでは色が少々濁るが、CG243Wではパネルの端まで色が転ばずに表示できているのが確認できた。複数人で1台の液晶ディスプレイを囲んでミーティングする場合などでは、視野角特性のよさが生かせる。
視野角特性がより顕著になるのが、画面を90度回転させての縦位置表示だ。対角61センチの24.1型ワイドパネルともなると、回転させた場合にかなり縦に長い表示になる。人間の目は左右に2つ並んでいるので、画面と向き合ってデータの上下端を見ようとすると、自然と画面を見る角度が急になり、VA方式のパネルでも色かぶりが気になることは決して少なくない。その点、CG243Wは縦位置でも横位置でも実に均一な色を表示してくれる。
ちなみに、縦位置表示は手間がかかるので使わないという人もいるが、縦位置の写真を現像したり、レタッチする場合には、イメージの把握と細部の確認が両立できるので作業効率が確実に向上する。
無論、通常の横位置表示でもデータの表示倍率を下げれば、縦位置写真の全容を把握できるが、それでは細部の描写が把握できないため、設定を追い込むのに手間がかかってしまう。その点、CG243Wでは縦位置表示でも現像やレタッチの用途に活用できる。
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提供:株式会社ナナオ
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia +D 編集部/掲載内容有効期限:2009年9月30日